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なぜサイボウズはデザイン組織を再編したのか? デザインは誰がつくるのか?

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なぜサイボウズはデザイン組織を再編したのか? デザインは誰がつくるのか?

デジタルトランスフォーメーション(DX)の波が企業に押し寄せる中、組織のあり方も大きく変化しています。特に、デザイン、エンジニアリング、ビジネスの融合が重要視される現代において、これらの職能を効果的に組み合わせた組織づくりは、多くの企業の課題となっています。

今回はデザイン組織再編を行い約1年が経過したサイボウズ株式会社のsakitoさんと白石まゆみさんに、組織再編の背景や現在の取り組み、今後の展望について伺いました。

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サイボウズ株式会社 開発本部 リサーチ支援部 副部長 白石まゆみ(しらいしまゆみ)さん

2017年サイボウズに中途入社。前職は外資系IT企業にてUXリサーチャーとして勤務。サイボウズでは、主にGaroonのユーザーリサーチを担当し、現在はリサーチ支援部の副部長として、各プロダクトのUXリサーチ関連業務のフォローやメンバーのマネジメントを行う。

デザイン組織再編に至った理由

―サイボウズのデザイン組織再編についてお聞かせください。2023年の秋頃から始まり、2024年1月に大規模なデザイン組織再編があったと聞きました。どのような経緯があったのでしょう。

白石まゆみさん(以下、白石。敬称略):再編以前は「デザイン&リサーチ」というチームがありました。そこではデザイナーとリサーチャーが共に活動し、開発チームとは別の組織として機能していたのです。もちろんメリットはありましたが、再編に至った理由として、大きく3つの要因がありました。1つ目は、デザイナーやリサーチャーの得意分野や向き不向きがあり、特定のプロダクトに固定化されてきたこと。2つ目は、アジャイル開発の導入により、開発スピードが速くなってきたこと。3つ目は、受注型の体制では柔軟な対応が難しくなってきたことです。

―デザイナーやリサーチャーと開発チームとの関係性において、どのような課題があったのでしょうか。

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サイボウズ株式会社 開発本部 kintoneプラットフォーム プロダクトデザイン 部長 (主務)、開発本部 プロダクトデザイン戦略部 部長ほか兼務 sakitoさん

2019年サイボウズに中途入社。フロントエンドエキスパートチームに所属し、2022年にはデザインシステムチームを立ち上げ、2023年から2024年にかけてkintoneのデザイン責任者とデザイン室のリーダーを務める。2024年からはプロダクトと全社のデザイン組織づくりやプロセスの改善を手がける。

sakitoさん(以下sakito。敬称略): 組織のあり方として、再編前は「ハブ&スポーク」と呼ばれる体制だったのですが、デザイナーと製品開発チームの距離が遠いという課題がありました。つまり同じ製品開発チームだけど、デザイナーは別チームという意識が少なからずありました。デザイナーだけで固まったり、エンジニアはデザイナーと密に相談して進める、ということがやりづらかったり…。自分は組織形態やプロセスが成果物に影響を与えると考えているのですが、再編は必要だったと思います。

―それまでの「ハブ&スポーク」から「製品チームごとにデザインチームがある体制」に再編した、ということですね。

sakito:そうですね。もうひとつ、先ほど白石が触れた再編の3つの要因とは別にマネージャーのあり方についての議論もありました。例えばデザイナー職のマネージャーがデザイナー職ではないという状況があったのです。チーム再編は、開発環境のスピード・効率化に加え、人材評価やキャリア支援の側面もありました。

最終的に「デザイン&リサーチ」のチームは解散し、各製品チームに専属して活動するデザイナーがいる体制になりました。リサーチャーは各製品チーム専属にできるほど人数がいないということもあり、兼務する形を取りました。またマネージャー制度を導入し、デザイナーのマネージャーはデザイナーが、エンジニアのマネージャーはエンジニアが担当するようにしました。これにより、人材育成やスキルアップの面でも改善が図れるようになりました。

再編前は「ハブ&スポーク」と呼ばれる組織体制

サイボウズデザイン組織再編

上:再編前は「ハブ&スポーク」と呼ばれる組織体制だった。デザイナーやリサーチャーと製品開発チームとの距離が遠く、活発なコミュニケーションがとれていないことが課題だった。下:組織再編後は、デザイナーがチームごとに専属して活動する体制となった。

―具体的にはどのような体制になっているのでしょうか。

sakito:現在は、開発本部の中に3つのラインがあります。「kintoneプラットフォーム開発」「グループウェア・コンポーネント開発」、そして「開発支援機能」です。各ラインには複数の部があり、その1つとして専属のプロダクトデザイン部があります。

チーム力の向上が製品のクオリティにつながる

―プロダクトデザイン部にはどのような職種の方がいるのでしょう。

sakito:kintoneプラットフォーム開発はプロダクトデザイン部の中に、プロダクトデザイナー、デザインテクノロジスト、デザインプログラムマネージャーという3つの職種があります。グループウェアコンポーネント開発はプロダクトデザイナーのみです。また、リサーチ支援部からリサーチャーが各プロダクトチームに参加する形を取っています。

―新しい組織体制によって、どのような変化が生まれましたか?

sakito:デザイナーで言えば、以前は依頼されたデザインを作るという受動的な立場でしたが、今はデザイナー側から積極的に提案したり、小さな改善を継続的に行ったりすることができるようになりました。また、エンジニアとデザイナーのコミュニケーションが日常的になり、より密接な協働が可能になりました。

デザインはデザイナーがつくるものではなく、エンジニア、リサーチャー含めた複数の視点から練り上げていくものと考えています。再編によって好影響が出ていて、例えば弊社のサービス「kintone」は頻繁にアップデートを繰り返して最適化を日々続けているのですが、機能だけでなくUIUX、デザインが少しずつ変わってきているのは、この新しい体制の成果の一つです。また、リリースのサイクルも短くなり、ユーザーの声をより早く反映できるようになりました。

kintone最新アップデート画像

デザイン組織の改編により、細かな改善を繰り返し、頻度高くアップデートできる体制となった。

―マネージャー制度の導入によって、人材育成の面でも変化がありましたか?

sakito:デザイナーの環境づくりや事業にとって良いデザインを生み出すことに、責任を持つ人が明確になりました。これにより、目の前の業務をこなすだけでなく、1年後の未来も考えられるような体制が整ってきたと感じています。

―リサーチ支援部の役割について、もう少し詳しく教えてください。

白石:リサーチ支援部は、各プロダクトチームに横断的に参加し、UXリサーチを行っています。上流工程から下流まで、幅広い範囲で実践していますが、最近は上流工程でのリサーチに力を入れており、PMと協力してプロダクトの方向性を決める際の重要な役割を担っています。

同時にリサーチの範囲が広がる中、リサーチャーの人数が限られているため、どこに最もインパクトのある貢献ができるかを常に考えています。例えば、上流工程でのリサーチに注力すると、ソリューション段階でのリサーチが手薄になる可能性があります。デザイナーとリサーチャーがより効果的に協業できる方法を模索し続けています。

サイボウズ社フロア

サイボウズ株式会社のオフィスエントランス付近は来客対応だけでなく、スタッフ同士も気軽に相談しやすいスペースになっている。奥に見える会議室は外から様子がうかがえるガラス張りになっているスペースが多く、風通しの良さが感じられた。

“チームが生み出すデザイン”を目指したい

―組織再編の次に取り組む今後の課題があればお聞かせください。

sakito:高頻度でリリースを行う中で、デザインの改善サイクルをさらに効率化することが課題ですね。デザインの変更を小さな単位で行い、その効果を迅速に検証できるプロセスを確立することを目指しています。

白石:ユーザーフィードバックの収集と分析も重要な課題です。ユーザーからの声を効率的に且つスピーディに集め、その中から本当に重要な情報を抽出する仕組みづくりに取り組んでいます。

―最後に、サイボウズのデザイン組織が目指す未来像をお聞かせください。

sakito:私たちが目指しているのは、「チームが生み出すデザイン」です。デザインは個人の才能だけでなく、多様な職種が協力してつくり上げるものだと考えています。エンジニア、デザイナー、リサーチャー、ライターなど、それぞれの専門性を活かしながら、より良いプロダクトをつくり上げていく。そんな組織文化を育てていきたいと思っています。

取材・文:桑原勲
取材撮影:大久保歩(アマナ)

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